個人開発を始める前に決める3つのこと
個人開発とは、自分で考えたWebサイトやアプリ、デジタルツールを、自分の手で作ることです。会社を立ち上げたり、最初から多くの人に使ってもらったりする必要はありません。自分だけが使う読書記録、家族と使う買い物メモ、趣味の情報をまとめるサイトも、立派な個人開発です。
プログラミングやデザインを学んでから始めなければならない、という決まりもありません。分からないことを調べながら作る方法も、AIに相談しながら作る方法もあります。ただし、作り始める前に「何を作るのか」を小さく決めておかないと、途中で必要な作業が分からなくなります。
最初の個人開発で決めることは、次の三つです。
どんな困りごとを解決するか
最初の作品で何ができればよいか
どこまでできたら完成にするか
この記事では、「読んだ本を記録する小さなアプリ」を例に、三つの決め方を説明します。
1. 身近な困りごとを一つ選ぶ
最初から世の中にない新しいサービスを考える必要はありません。日常生活の中で、自分が少し面倒に感じていることを探します。
たとえば、次のような出来事です。
読み終わった本の題名を忘れてしまう
買い物へ行くたびに同じものを買い忘れる
毎日の勉強時間を手帳へ書くのが面倒
趣味で集めた情報が、メモやブックマークに散らばっている
ここでは「読み終わった本の題名を忘れてしまう」を選びます。
「読書をもっと便利にする」のような大きな目標では、何を作ればよいか決まりません。「本を読み終えたとき、題名を記録する場所がない」のように、困る場面まで書くと、必要なものが見えやすくなります。
自分に困りごとが思い浮かばない場合は、最近使ったメモ帳、表計算、紙の付箋を見返してみます。同じ内容を何度も書いている場所や、情報を探すのに時間がかかる場所は、小さなアプリで改善できる可能性があります。
他の人のために作らなくてもよい
最初の利用者は、自分一人でも構いません。誰かに販売する予定や、仕事にする計画も必要ありません。
自分で使う作品には、困っている場面をすぐに確認できる利点があります。実際に使ってみて「入力が面倒だった」「この項目は必要なかった」と分かれば、それが次の改善材料になります。
まずは、自分が一度でも使いたいと思えるものを選びます。
2. 最初にできることを一つ決める
次に、最初の作品でできることを一つだけ決めます。
読書記録アプリには、さまざまな機能を考えられます。
本の題名を記録する
表紙画像を表示する
感想を書く
読んだ冊数をグラフにする
他の人の感想を見る
おすすめの本を表示する
これらをすべて作ろうとすると、最初の一画面を完成させるまでに多くの知識が必要になります。初めての作品では、「本の題名を入力すると、画面の下に一覧で表示される」だけに絞ります。
この一つが動けば、読んだ本を忘れないという最初の困りごとを解決できます。表紙画像や感想欄は、題名を記録できるようになってから追加できます。
必要な画面を考える
「本の題名を記録する」ために必要なものを、利用する順番に並べます。
本の題名を入力する場所
入力した内容を追加するボタン
追加した本が並ぶ一覧
最初は、この三つを一つの画面に置くだけで十分です。会員登録、ログイン、メニュー画面、詳しい設定画面は、まだ必要ありません。
機能を思いついたときは、「これがないと本の題名を記録できないか」と考えます。なくても記録できるなら、その機能は後で作るものとして別のメモへ移します。
3. 完成したと言える状態を決める
個人開発には、学校の課題のような提出期限や、上司からの完成指示がありません。そのため、自分で完成地点を決めないと、細かな修正を続けていつまでも終わらなくなります。
読書記録アプリの最初の完成地点は、次のように決められます。
アプリの画面を開ける
本の題名を入力できる
追加ボタンを押すと、題名が一覧へ表示される
間違えて空のまま追加しても、壊れない
一度画面を閉じても、登録した題名が残っている
見た目が完成予想と少し違っていても、この五つを確認できれば最初の完成です。色や文字の大きさは、完成後に直せます。
また、完成と公開は別のものです。自分のパソコンやスマートフォンで動かすだけでも、作品として完成させられます。インターネットで誰でも使えるようにする作業は、作品を作り終えてから学んでも問題ありません。
できなかったことも記録する
作っている途中で難しい部分が見つかったら、失敗ではなく作業メモとして残します。
たとえば、「題名は表示できたが、画面を閉じると消えてしまう」と分かった場合です。この時点で、次に調べることは「入力した内容を残す方法」だと分かります。
分からないことを一度にすべて調べる必要はありません。現在できていることと、次に直す一つを分けると、作業を続けやすくなります。
AIに相談するときも、一度に一つずつ頼む
AIを使って開発する場合も、最初から「読書記録サービスを全部作ってください」と頼むのではなく、作りたいものを小さく伝えます。
たとえば、最初の依頼は次のように書けます。
プログラミング初心者です。読んだ本の題名を記録する小さなアプリを作りたいです。最初は一つの画面だけにします。題名の入力欄、追加ボタン、登録した本の一覧が必要です。作業を一段階ずつ説明してください。
生成されたものが動いたら、実際に本の題名を一冊追加します。動かなければ、表示されたエラーや、どの操作で止まったかをそのまま伝えます。
AIが提案した内容をすべて理解してから進む必要はありませんが、何を変更したかは一つずつ確認します。一度に多くの機能を追加すると、問題が起きた場所を見つけにくくなるためです。
作り始める前の一枚メモ
ここまで決めた内容を、次の形でメモします。専用の企画書は必要ありません。紙、メモアプリ、テキストファイルのどれでも構いません。
作るもの:読んだ本を記録するアプリ
困っていること:読み終わった本の題名を忘れてしまう
最初にできること:題名を入力して一覧で確認できる
必要なもの:入力欄、追加ボタン、本の一覧
今回は作らないもの:ログイン、表紙画像、感想、共有機能
完成の確認方法:実際に一冊登録し、画面を閉じても題名が残っていることを確認する
作業項目が増えたら、メモを見返します。現在の完成に必要でなければ、「後で作るもの」へ移します。GitHubを利用している場合は、GitHub Issuesへ作業やアイデアを記録する方法もありますが、最初は普段使っているメモで十分です。
最初の目標は、小さく完成させること
最初の個人開発では、多くの人に使われることや、収益を得ることを目標にしなくても構いません。自分で決めた小さな機能を、実際に動くところまで作ることが最初の目標です。

一つの作品を完成させると、「入力欄とは何か」「ボタンを押すと何が起きるのか」「入力した内容を残すには何が必要か」が、知識だけでなく経験として分かるようになります。その経験が、次に作る作品の出発点になります。
困りごとを一つ選び、できることを一つに絞り、完成地点を決めます。最初の一歩では、それだけ決まっていれば十分です。