個人開発の利用規約を準備する

サービスを公開して人に使ってもらうと、「どこまで使ってよいのか」「トラブルのとき誰が責任を持つのか」という取り決めが必要になります。それを文章にしたものが利用規約です。プライバシーポリシーが「データの扱いの説明」だとすれば、利用規約は「サービスと利用者の約束事」を決める文書です。

この記事では、個人開発者が最初の利用規約を準備するときに、決めるべき項目、気をつける法律、公開のしかたを整理します。

この記事は一般的な情報の整理であり、個別の状況に対する法的助言ではありません。有料販売や利用者のデータを大きく扱うサービスでは、一次情報の確認とあわせて専門家への相談を検討してください。

利用規約が果たす役割を知る

利用規約は、利用者との間で繰り返し使う契約条件のひな形です。日本の民法には、不特定多数との取引のために準備された画一的な条項(定型約款)についてのルールがあり、経済産業省の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」では、ウェブサービスの規約が契約内容になるための考え方が整理されています。

大切な点は二つです。

  • 規約は、利用者が内容を確認できる状態で示され、同意の機会があることで初めて意味を持ちます。サイトの奥に置いてあるだけでは足りません

  • 書いてあれば何でも有効になるわけではありません。消費者契約法により、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項や、消費者の利益を一方的に害する条項は無効とされます

「当方は一切の責任を負いません」とだけ書く規約が個人開発でよく見られますが、この書き方は消費者契約法の観点で機能しない可能性が高い条項です。

最初に決める項目を書き出す

ひな形を探す前に、自分のサービスについて次を書き出します。この中身こそが規約の本体です。

  1. サービスの内容:何を提供するサービスか、一文で

  2. してほしくない使い方:不正アクセス、他の利用者への迷惑行為、自動化された大量アクセス、再配布など

  3. アカウントの扱い:登録の条件、利用者側の管理責任、放置されたアカウントの扱い

  4. 料金と支払い:有料の場合の料金、支払時期、変更の告知方法(個人開発の最初の価格を決めるで決めた内容と一致させます)

  5. サービスの変更・停止:メンテナンスや仕様変更、サービス終了がありうること、その告知方法

  6. 投稿されるデータの権利:利用者が投稿した文章や画像の権利は利用者に残るのか、サービス側はどの範囲で利用するのか

  7. 責任の範囲:無料サービスとして提供できる品質の範囲、免責したい事項(全部免除は書かない)

  8. 規約の変更方法:変更するときの告知方法と時期

同意の取り方を設計する

規約は置き場所と見せ方まで含めて設計します。

  • 登録やアカウント作成があるサービスでは、登録ボタンの近くに規約へのリンクを置き、「登録することで利用規約に同意したものとします」ではなく、確認できる導線と明確な同意の操作を用意します

  • 登録のないサービスでも、フッターなど全ページから到達できる場所に置きます

  • 規約を変更したときは、施行日と変更点を告知します。告知の仕組みは更新を伝え続ける仕組みをつくるが使えます

関連する文書とそろえる

利用規約は単独では完結しません。次の文書と内容を一致させます。

同じ事柄が文書ごとに食い違っていると、どれを読んだ利用者にも不信感を与えます。価格・返金・解約は一箇所で決めて、各文書へ反映する順番にします。

ひな形を使うときの注意

公開されているひな形やAIが生成した規約をそのまま使うと、自分のサービスに存在しない機能への言及が残ったり、逆に投稿機能があるのに権利の定めがなかったりします。

  • ひな形の各条項について、「自分のサービスのどの機能の話か」を答えられるか確認します

  • 答えられない条項は削るか、書き直します

  • 書き出した8項目がすべて反映されているかを最後に確認します

次に読む記事

公開前の法務まわりの総点検は個人開発を公開する前のチェックリストで確認できます。他人の素材を使う場合の権利関係は画像・フォント素材のライセンスを確認して使うで整理しています。

参考資料